Dirty Loopsに学ぶYouTubeの使い方+ベース解説
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──音楽をやりたくなるか、止めたくなるか。
そんな、キャッチコピーが付けられ2014年4月16日にデビューしたスウェーデンの超実力派3人組バンドDirty Loops(ダーティループス)がめちゃくちゃ格好良い&話題になっている。今回はそんなDirty Loopsのプロモーション方法とベーシストのHenrikにスポットを当ててみよう。
僕が最初にDirty Loopsを知ったのはHit Meでした。この曲はDiry Loopsのファーストアルバム『loopified(邦題はDiry Loops)』のリードと言える曲で、バンドで初めて書いた曲でもあります。レコーディング前日に思いつきでリズムやコーラスをガラッとアレンジを変えたらしい。
スタジオで録音・演奏している白黒映像はDirty Loops Styleとも言われYouTubeで真似(コピー)するバンドも居るほどでYouTubeでは本人たちも含めDirty Loops関連の動画が数多くある。
というのも以前からDirty LoopsはYouTubeでBritney SpearsやRihanna、Lady GaGaなどのカヴァー動画をあげており、デビュー前から既に注目を集めていたYouTube出身と言えるアーティストである。
バイオグラフィー
- ジョナ (Jonah Nilsson) – vocals, keyboards
- ヘンリック (Henrik Linder) – bass guitar
- アーロン (Aaron Mellergardh) – drums
Dirty Loopsの3人はヨーロッパ最古の音楽学校ソードラ・ラテン音楽学校(Södra Latins gymnasium)、スウェーデン王立音楽アカデミー(Royal Swedish Academy of Music)の出身で、すぐレコード会社と契約はせずにYouTubeを使い自らの実験的な音楽を発信して売り込んでいくことを選択した。
確かな演奏技術とアレンジ力で次々にあげられる動画は5本で累計1400万再生されるほどに。そして、その動画をキッカケに1年かけてようやく3人を口説き落としたのが、Earth, Wind & Fire, Michael Jackson, Celine Dion, Madonnaなどを手がけたことで知られるプロデューサーのデイヴィッド・フォスター(David Walter Foster)である。
知名度のあるアーティストの曲をカヴァーして知ってもらう
たった5本の動画だけで1400万回も再生されたのは何も演奏技術の高さだけが理由ではない。最初にも述べたように彼らは知名度のあるアーティストの、なおかつその時期に話題性のある曲をカヴァーすることにより注目を集めたのだ。「誰にも見てもらえなければ意味は無い。」全てはそこから来ている。
以前、取り上げたThe Piano Guysもアナと雪の女王のlet it goなど話題の曲をセレクトしているのが分かる。
なによりアレンジ力を武器とするDirty Loopsは編曲について「重要なのは独自のひねりを加えることだ。それこそ別の曲に聞こえるほどにね。」と語っている。
▼Dirty Loopsがあげたカバー楽曲一覧
- Just Dance (Lady GaGa Cover )
- Baby (Justin Bieber cover)
- Circus (Britney Spears cover)
- Prude Girl (Rihanna – Rude Boy Cover)
- Rolling In The Deep (Adele Cover)
どれも世界的にヒットした楽曲である。
YouTubeは今や知らない人は居ないほど巨大な動画サイトであり、音楽アーティストにも切り離せないものだ。そんな場所で、みんなが知っている曲を自分たちの表現に変えて観てもらう。これは現代のアーティストにとって最も多くの人にアプローチできる、有効なプロモーション方法の1つだろう。
最近のアプローチ方法としてTwitterやSoundCloudがあげられることも多いが、YouTubeはズバ抜けてると思うし、活動する上で活用すべきだと考えている。
さて、Dirty Loopsの売り込み方と成功も全ては音楽性と技術があってこそ。Dirty Loopsとはどんなバンドなのか、もう少し詳しく見てみましょう。
次世代ポップスと言われる音楽性
Dirty Loopsのアルバム『Loopified』ではクラブビートやエレクトロニック、ファク、フージョンなど多くの要素が取り入れられている。それらの楽曲は、幼少から培われた音楽理論と、それぞれがスタジオミュージシャンとしても活動してきた技術が合わさり成り立っている。
なんと言っても凄いのは複雑なリズムとコードが重なりながらも、聞きやすいメロディとノッてしまうグルーヴで見事なポップスに昇華しているのということ。それは日本でアークティック・モンキーズ以来8年ぶりに洋楽バンドとして1stアルバムがTOP10入りしたことが証明している。
あのクインシー・ジョーンズも「モダン・ジャズのヴォイシングを完璧に操りながら、それをポップスにいとも簡単に組み込み、自分の音にしてしまう。正に21世紀の音楽だ」と絶賛したのこと。
有名な楽器プレイヤーのソロアルバムでしか聞かないような超絶プレイがオリコン入りした楽曲の中で聞けるのは非常に面白い。
ファーストアルバムは全世界に先駆けて日本で発売されたのですが、それもコード進行や転調の多さが日本のリスナーともマッチすると見越してのことだという。そんなこともありDirty Loopsが世界中で初めて演奏した生放送が、情報バラエティのスッキリ!!というのも面白い。
UNIVERSAL MUSIC JAPANの力の入れようもなかなかで、滞在レポートや全曲解説など公式ホームページがかなり充実していて素晴らしい。
超絶技巧ベーシストHenrik Linder
一応ベースブログなので、いつものようにベーシストのヘンリック・リンダーにスポットを当ててみましょう。
6弦ベースでテクニカルなプレイをこなす技巧派ベーシスト。エモボーイばりのアシンメトリーヘアーにメイクや口ピアスというスタイリッシュスタイルだが、ちょっと小太りなところが憎めない。インタビューではヘンリックが主に喋るようだ。
最も影響を受けたベーシストはゲイリー・ウィリス
ヘンリックは4歳でピアノを始めたが、レッド·ホット·チリ·ペッパーズを聞いた後13歳で低音にシフト、最も影響を受けたというトライバルテックのゲイリー·ウィリス、加えてフリーの初期の90年代のベースラインのすべてを習得したとのこと。確かに親指を多用するスタイル、右手を丸めるような弾き方はゲイリー・ウィリスとそっくりですね。
その他にも影響を受けたベーシストとして以下の人物たちをあげている。
Gary Willis, Nathan East, Hadrien Feraud, Matthew Garrison, Jimmy Johnson, Flea, Les Claypool, Victor Wooten, Marcus Miller, Jimmy Haslip. Jaco Pastorius, Dominique Di Piazza, Anthony Jackson, Tom Kennedy, James Jamerson, Bootsy Collins, Richard Bona, Janek Gwizdala, John Patitucci, James Genus, Jeff Berlin, Pino Palladino.
滑らかさを出す左手と正確な右手のタッチ
ヘンリックは様々な奏法をこなすが、中でもスラップやハンマリング・プリングオフなどを始めとするレガート奏法をたくさん使う。
テクニカルなプレイの人はタッチが弱い人が多いのだけど、ヘンリックもタッチが弱いのでアンプを上げているとのこと。よくタッチが弱いと音の芯が出ないと言われますが、鳴らし方の問題だろうなーと最近よく思うようになりました。特に最近のベースは出力が上がってきているのでタッチが弱くても鳴りやすい。リンダーは8年間、ブリッジピックアップが壊れているYAMAHAのベースでいかに音を出すかやっていたそうです。
曲作りでは、ドラムとピアノなどを入れた後、最後に隙間を埋めるようにベースを入れているとのこと。メンバーとの合わせでうまくハマらないところはハマるまで延々と繰り返して1つずつ潰していくらしい。そうしたストイックさがあれだけの技術に結びついているんでしょう。
使用機材
Basses Mattisson Series II 6-string, Yamaha TRB6
弦 Elixir medium/long-scale
アンプ EBS Fafner head and ProLine 4×10 or 8×10 cabinets, Aguilar DB 680 preamp (for recording)
エフェクター EBS UniChorus, DynaVerb, OctaBass, and MultiComp
![]() 天才べーシスト、ジョン・パティトゥッチ・シグネチャー・モデル!!YAMAHA 《ヤマハ》 TRB-JP2… |
上記以外にもチューナーはSONIC RESEARCH ST-200、パワーサプライのT·Rex Fuel Tank Classic、MXR Bass Octave Deluxe, Line 6 delay、そしてSource Audio distortionと併せて指弾き用、スラップ用、ソロ用でEQを3通りセットしているとのこと。
さらにはTC electronic公式にアーティストページもある。
なお、現在のメインベースであるオーダーのMattisson Series II 6-stringの仕様は以下の通り。
One piece alder with flame pear top
Flame maple / wenge neck
Wenge fretboard
EMG pickups
Aguilar obp-2 electronics
Hipshot hardware
この特注のMattissonはかなり拘りがあるらしく、ネックは36インチのウルトラロングスケール。通常は2フレットにカポをはめているらしく、ネック裏にはカポ用の凹みがある。おそらくそれが一番良いテンションになるのだろう。
ナットの下には0フレットがあり、それによってスラップの響が良くなるらしい。6弦の内1,2,3弦はギター用のペグが使われDチューナーも装備している。
機材の写真などはDirty Loopsが特集されたベース・マガジン5月号でも載ってました。
ちなみにジョナが使ってるキーボードの機種はKORGのX50。もっといいの使っても良さそうなのになんでこれなんだろうか。気になる。
まとめ
高い歌唱力を持ち、歌いながらあれだけ鍵盤を弾きこなすボーカルのジョナ。15歳で参加したオーディション全てで史上最高得点を記録し、伝説を作ったドラムのアーロン。そしてベーシストのヘンリックと、素晴らしいメンバーが揃ったDirty Loops。
実は5月16日の大阪公演行こうと思ってたんだけど、費用が3万くらいかかるし一人だったので半分諦めの背中を押してもらうために「Twitterで誰か一緒に行く人が見つかったら行こう!」と決意。当然のようにぼっちの僕に反応は返ってくることもなく、その日は一人部屋で涙を流すことになりました。宇多田ヒカルのAutomaticもしたらしい。
行かなかったのを後悔するほどDirty Loopsが今後も活躍してくれることを期待してます。もう後悔してるけど!!
うたいぬの今日の一言
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