ベースの音作りはこれで完璧!アンプで抜けの良い音を作るコツ

ベースの音作りはこれで完璧!アンプで抜けの良い音を作るコツ

先日、エレキベースの音作りについて、さわりだけでも教えて欲しいと言われたので、僕なりのベースの音作りについて解説します。なぜ音作りするのか、どうやって音作りするのかの基礎はこれを読むだけでOK。(って言っときたい)

前回:意外と深い。ベースのチューニングに関するすべて

テーマは、初心者に向けた『今ある機材でより理想的な音を作る』です。竿やベースアンプ、エフェクターで何を使うかや弾き方ではなく、どんな状況にでも共通する”考え方”やアンプのセッティングに焦点を当てて話します。そして、音作り≒”バンドの”音作りだということについて。

目次

基本:作りたい・作るべき音を理解する

音作りをするには“どういう音にするべきなのか”をまず理解すること。

いわゆる”いい音”というのは『自分の理想とする音』『バンドに必要な音』の2つであり、これらは必ずしも一致するものではありません。なので、この2つをそれぞれ寄せる必要があります。

1.自分の理想とする音とは

言わずもがな自分が好きな音。またベース単体の音とします。これは本当好みと言え、ドンシャリなのかブリブリ系なのかなど、これもそのバンドのカラーになったりするので。理想の音に近づける方法は、自分の好きなベーシストの音を聞きながら、EQ(イコライザー)などのセッティングをイジってマネして作ってみるのが一番で、それしかないです。

2.バンドに必要な音とは

ベース単体でいいと思った音もバンドで聞くとイマイチということは少なくありません。そこで、さらにバンドに合わせてEQなどで調節する必要があります。バンドにはどういった音が必要なのか?それは周波数帯域とバランスで考えます。

人間の聞こえる周波数帯域を理解する

人間の耳には、だいたい20Hz~20KHzまでの可聴域と呼ばれる、音を聞いて感じる事のできる帯域があります。バンドはこの帯域をそれぞれの楽器で均等に鳴らすことが理想です。つまり、他の楽器の足りないところを補い、被っているところを削る。

taiiki

実際にはここまでキレイに分かれることはなく、複雑で被るところは多くありますが、イメージはこんな感じ。横(周波数帯域)だけでなく縦(ボリューム)も揃っていることに注目して下さい。

それぞれの楽器の帯域がキレイに分かれていれば、クリーンに聞こえ、それぞれのフレーズも聞き取れるようになり、音圧もあげられます。だから、こういうのは意外とポップスよりもハードコア、メタルなどの人たちのほうがキッチリしていると感じます。また、このような作業はDTMでいうミックスにあたります。

ベースアンプでセッティングしてみる

Ampeg/Hartke/SWR/EBS/PEAVEY/ギャリエンクルーガー/EDEN/MARK BASSなど、どのアンプのツマミでもマスター、ゲイン、ベース、ミドル、トレブルはだいたい付いてるので、これでセッティングしてみましょう。

VOLLUME (ボリューム)/GAIN (ゲイン)

どちらも音量が変わりますが、ゲインはあげるほど歪み成分が混じります。ゲインをあげるとドライブ感が出て気持ち良い歪みになるので、わざとアンプのピークが付くほど上げる人もいますが、その分アンプにも負担が掛かるため好まないPAさんなども多いようです。僕はゲインを決めた後にボリュームをドラムのキックに合わせます。

次に、ツマミや帯域ごとの特徴(感覚)を下にまとめてみました。(※Hzと名称はおおまかです)あんま参考になんないと思うけど、試しに昔遊びで録ったベース音源でそれぞれの帯域だけ鳴らした音も載せておきます。

▼ジャズベース単体

BASS (LOW/低域)

音の太さを決める。ブーストすると重い音になるが、上げ過ぎるとモコモコしたりこもる原因に。カットすると痩せた音になる。

▼20Hz-250Hz

  • 20~40Hz:聴覚では感じにくく圧迫感がある
  • 40~60Hz:ギターはほどんどなく、バスドラムとの兼ね合い
  • 60~100Hz:身体の芯に響くような低音
  • 100~250Hz:あたたかみ・厚みのある低音

MIDDLE (MID/中域)

音の抜けに重要。ブーストし過ぎると輪郭がぼやける。スラップ時やドンシャリならカット。カットすることで音が引っ込む。

▼250Hz-1.5kHz

  • 250~400Hz:ローミッド音抜け・キャラ付けに重要
  • 400~600Hz:ミドル。こもりがちな音で、ここらへんをカットするとドンシャリになる
  • 600Hz~1.5kHz:ハイミッド。男性ボーカルに被りやすい帯域。明るい音

ちなみにドンシャリサウンドがプレイヤーには大好評でお馴染みのサンズアンプも、ライブハウスのPAからは大体口をそろえて「抜けが悪くなる」と言われます。

TREBLE (HIGH/高域)

アタックが出たり音の輪郭がはっきりする。ブーストし過ぎると耳障りに。カットすると角が無く柔らかい音に

▼1.5kHz-2kHZ

  • 1.5~3kHz:フレットノイズがのりやすい帯域。女性ボーカルと被ってきやすいが、スラップなどで上げると気持ち良い
  • 3~5kHz:金属音のような耳につきやすい音

トレブルより高い帯域としてプレゼンス(PRESENCE)ツマミが付いていることもある。

どのツマミがどこの帯域かはアンプによって少しずつ異なりますが、頭に描いた音がどのくらいの帯域なのかが分かるようになるには、ツマミをイジって耳で覚えていくしかありません。

イコライザーの設定方法・手順

イコライザーの設定方法・手順

僕はまずアンプの設定がフラットになるようにします。ベースアンプによって5(真ん中)がフラットか、10がフラットかなどは違いますが、僕は設定可能な±範囲が最大値になるようツマミをてっぺんにしてから調節し始めます。

次に、ベース単体で好みの音にしつつ、上で述べたように他の楽器との被りを探します。他の音を意識しながら、自分の音もしくは他の楽器の音の被って聞こえにくい帯域があれば、そこを下げます。どこの音がぶつかっているのかが分からなければ、極端にイコライザーを動かすと、被っている帯域を見つけ易くなります。被った帯域を見つけ調節する際は、完全にカットせず少しだけでもいいです。一番目立たせるものに(帯域を)少し譲るというだけで、ずいぶん変わります。バンドでの音作りとは、音の主張のし合いであると同時に音の譲り合いでもあります。

イコライザーの設定で大事なのは、引き算から始めて、それで足りないところを後から足すということ。使える帯域(音量)は限界があるので、足し算で作っていくとボーカルが聞こえなかったり、バンドのバランスは破綻します。

また、EQは微調節としてちょっとずつ動かすのが基本ですが、どうしてもしっくりこない場合はツマミが0や10など超極端な設定をすることもあります。

パラメトリック/グラフィックどのイコライザーでも考え方は一緒

パラメトリック/グラフィック イコライザー 違い

アンプのLOW/MID/HIGHツマミ以外にも、より帯域が細かく分かれブースト/カットできるグラフィック・イコライザー、ブースト/カット+帯域可変のパラメトリック・イコライザーなどがありますが、違いはどこまで細かく設定できるかだけで、設定の考え方は一緒です。グラフィック・イコライザーで調節する場合にON、OFFボタンがあれば、調節しながらON、OFFしてみることで調節の結果を確認します。

音抜け・抜ける音とは

クリアな音で上記で述べたように帯域の住み分けができていれば、バンドで音が埋もれるということはほとんどないでしょう。コツとしてMID(400~700hz)をあげると音は抜けやすくなります。抜けない場合はドンシャリな音作りを辞めたりコンプを外すことで改善する可能性もあります。

ただ、抜ける音というのは、自分以外の楽器が存在して初めて「抜ける」という言葉が存在します。一人が作るものじゃなくてバンドで作るものと考えても良いかもしれません。

埋もれる原因は他の楽器が邪魔している可能性もあり

抜ける音を作るにはまずその隙間が空いてないといけません。ツインギターとかならまだしも、さらにキーボードやブラスが入ってくると、もはやベースの場所がないなんてこともあります。

ベースが抜けない = ギターの低音を抑える
ギターが抜けない = シンバルのボリュームを抑える
キックが抜けない = ベースの帯域をずらす
ボーカルが抜けない = 他の楽器がうるさい

自分の楽器とセッティングで改善できない場合は、別の楽器のせいで抜けいないという可能性も考えてみましょう。

ちなみに、抜けるとは別の言葉で言えば「浮いている」とも言えるので、主体となることの少ないベースは、抜けと同時に抜け過ぎない(馴染む)ことも必要かもしれませんね。

以下は、ボーカルやギター、ドラムなどベース以外の楽器で帯域ごとの特徴や旨みある部分の参考までに。

楽器 中心周波数 備考 二次周波数
バスドラ 厚み 80-100Hz 暖かみ 200-300Hz インパクト、残響 2.5-6kHz
スネア パワー 800-1.2kHz 厚み 120-400Hz 鳴り、残響 2-4/4-8kHz
タム 厚み 100-300Hz 鳴り 1-3kHz アタック 4-8kHz
シンバル 低音域 220-300Hz 鳴り 8-12kHz シズル感 8-12k
ストリングス 厚み 200-300Hz 鳴り 中音域全般 弓音 7.5-10kHz
ブラス 厚み 200-300Hz 高音域 6-8kHz メリハリ 8-11kHz
トランペット、サックス パワー 200-400Hz 鼻音 1-3kHz メリハリ 8-11kHz
アコギ 低音強調時 120-300Hz 抜け 2-5kHz シャリシャリ感 5-10kHz
エレキギター 低音強調 200-400Hz 高音の抜け 3-5kHz シャリシャリ感 8-14kHz
エレキベース 厚み 80-100 抜け 200-500Hz アタック 0.5-1.5kHz
ウッドベース エレベに同じだが、 2kHzを強調すべし
ボーカル 厚み 120Hz、鼻音 1-3kHz、 ハリ 4-5kHz、緊張感 15-18kHz、呼吸 7-12kHz

via: 『何はなくともEQ:個々の楽器が占める周波数帯域から

ペダル型プリアンプ、アクティブベースとアンプで設定することの違い

練習スタジオの場合はあまり関係ないですが、ライブなどDIを通してアンプと別に音を出す場合は注意が必要です。

ライブハウスでは、アンプの前にDIが置かれていることがほとんどなので、足元のエフェクター(プリアンプ)やアクティブベースに付いているEQで設定すると、その音がPA卓に送られメインスピーカーから出力されます。例えば極端な話、アンプのHIGHが0でモコモコの音だからと足元や手元のEQでHIGHをマックスにすると、アンプからはちょうどよいHIGHが出たとしても、お客さんが聞くメインスピーカーからはギャリンギャリンと耳障りな音が出ることになります。

これを理解した上で扱うことはアリですが、基本的にDI前のプリアンプはPA(ライン)用に作りこんでおいて、自分の出音用にアンプをいじるというのがベスト。

音作りに関する7のコツ

その他覚えておくと役立つかも知れない音作りのコツ・知識をまとめました。

1.基準とする音を決める

固定のバンドなら出す音は決まっていくはずなので、自分(メンバー)の音も決まっていき、セッティングは早くなります。意識してどういう音を鳴らすべきなのかを日頃から考えましょう。例えばアンプの音量はバスドラムと揃えるなど、セッティングに基準を作っておくことで環境の違う場所でも素早く音作りが行えます。作りたい・作るべき音を理解しているほどセッティングは早くなります。

2.部屋やアンプの状態によっても音が変わる

アンプの向きや位置を変えるだけで解決することは多いです。聞こえないという人の方向に向けてあげる、音大きいという人からは位置をズラす。ベースの音がモアモアするという場合、ベースアンプの裏と壁の間で低音が響いてることがあるので壁から離したりくっつけたり。また、ベースアンプをキャスターに乗せてたりする場合は、しっかりした床に直置きすると締まった低音が鳴ります。

3.歪ませるメリット

3ピースバンドなどではベースを歪ませることで隙間が埋まり音に厚みが出ます。また、音を歪ませると複雑に動くラインも埋もれず見えやすくなります。歪ませると低音が痩せがちなので、EQで補強、ブレンド機能のある歪みエフェクターを使うなどしてみましょう。

4.PA卓から鳴らす

ベースアンプからどうしてもダメな音しか出ない、そんな時スタジオに一定以上のPA卓のスピーカーシステムがあれば卓から出すと意外とそっちの方がよかったりします。その際の注意点は、PA卓にハイインピーダンスOKの差し込み口以外にハイインピーダンス(パッシブ)のまま差さないこと。アクティブベースを使うか、バッファーの入っているエフェクター(例えばBOSSやSANSAMP BASS DIをON状態)やDIを間に挟むなどが必要。あとはボーカルの音を潰さないように大音量は出さないなど、自分以外の機材は壊さないように注意してくださいね。

5.EQはいじるほど音が変わる

eq-boostcut

A.ツマミを全部5(標準)にあわせた音
B.ツマミを全部10にしてボリュームをAと揃えて下げたもの
では音は違います。これはそれぞれイコライザーのQ値(Q幅)が違うためで、同じようにハイパス/ローパスツマミを下げたのをEQで補正してもフラット状態との音とは異なります。

6.何を聴かせたいのか意識する

ほとんどのバンドにとって『声が聞こえるかどうか』これはかなり大事。ベース以外の音の中でもボーカル(自分のバンドで一番大事なもの)は特に意識してみましょう。演奏中に自分の音聞いて気持ちいいと感じるより、バンド全部の音で気持ちいいって思えるようになることが大事です。

7.低音カットでスッキリ

ベースだからといってLOWを上げる必要はありません。特に小さいスタジオではLOWが回りまくって他が聞こえないというのが多々あるため、80Hz以下をバッサリ切るのもアリです。低音はパワーが大きいため、ここをスッキリ出来るとバンド全体がスッキリします。ちなみにミュージックマン スティングレイは内蔵プリアンプで80Hz以下をカットしている為、レコーディングなどでは音が薄く感じますが、ライブではスッキリします。

まとめ

音というのは、今回紹介した以外にも技術や機材自体など、本当に細かいことの積み重ねが何百、何千とあり出音になります。”音作りのさわりだけ”ということでしたが、今回の基本が分かっていれば完璧であると同時に、これだけ長くても本当にただのさわりでもあります。

機材選定や楽器の材質うんぬんは、「アンプのセッティングを詰めれるようになった、だけどそれだけでは足りない」という時にやっと出てくる話です。

それでは、質問や要望などブログコメントやTwitterにてお待ちしてます。